気になる口臭、歯周病が関係しているかも?原因と対策を解説
私が歯科医院で診療をしていると、よく患者さんから「先生、口臭が気になって…」という相談を受けます。特に最近は、マスク生活が日常になったことで、自分の息の匂いが気になる方が増えているように感じます。今回は、口臭の大きな原因となっている歯周病について、私の臨床経験をもとにお話ししたいと思います。
意外と知られていない歯周病と口臭の関係
「歯周病イコール歯が抜ける病気」というイメージをお持ちの方が多いのではないでしょうか。確かにその通りなのですが、実は口臭の原因としても要注意な病気なのです。
診療室では「最近、家族に口臭を指摘されて…」と心配そうに来院される方も少なくありません。そういった方の口腔内を拝見すると、やはり歯周病が進行しているケースが非常に多いのです。
口臭はなぜ起こる?歯周病との関係を紐解く
口の中の環境は、実はとても複雑です。歯周病になると、歯と歯ぐきの間に深い溝ができます。私たちはこれを「歯周ポケット」と呼んでいます。この溝が厄介な問題を引き起こすのです。
まず、この溝に食べ物のかすが溜まります。そこに住みついた細菌がこの食べカスを分解する過程で、硫化水素やメチルメルカプタンという物質を出すのです。これが、あの特徴的な口臭の正体です。
臨床現場で特に気になるのは、歯周ポケットが深くなるほど、口臭がひどくなっていく傾向です。歯周病が進行すると、歯を支える骨が溶けていき、それに伴って歯周ポケットはさらに深くなります。まさに悪循環というわけです。
具体的な対策方法をご紹介
口臭でお悩みの患者さんには、以下のような対策をお勧めしています。
まずは丁寧なブラッシングです。特に就寝前の歯磨きは重要です。昼間以上に時間をかけて、丁寧に磨いていただくようお願いしています。
また、歯ブラシだけでは不十分です。歯と歯の間の清掃には、歯間ブラシやデンタルフロスが欠かせません。「面倒くさい」という声もよく聞きますが、続けることで確実に効果は表れます。
舌の清掃も重要です。舌苔(舌の表面の白い汚れ)も口臭の原因となります。舌ブラシや舌クリーナーを使って、優しく取り除いていきましょう。
そして何より大切なのが、定期的な歯科検診です。歯周病は痛みを伴わないことが多く、気付いたときには進行していることがあります。
予防と改善のための生活習慣
口臭予防には、普段の生活習慣も大切です。日々の診療で患者さんに特にお伝えしているのが以下のポイントです。
水分をこまめに取ることで、口の中を潤した状態に保ちます。唾液には自浄作用があり、細菌の増殖を抑える効果もあるのです。
喫煙は避けましょう。タバコは歯周病を悪化させるだけでなく、それ自体が口臭の原因にもなります。禁煙外来を併設している歯科医院も増えていますので、禁煙をお考えの方はご相談ください。
最後に
口臭の問題は、人間関係や社会生活に大きな影響を与えます。しかし、適切な治療と予防で必ず改善は可能です。
「口臭が気になる」「歯ぐきから血が出る」といった症状がある方は、ぜひ歯科医院を受診してください。早期発見・早期治療が、口臭改善への近道です。
口臭に悩む方の笑顔を取り戻すお手伝いができること。これは私たち歯科医師にとって、この上ない喜びです。皆様の健やかな口腔内の健康のために、私たちは常に全力でサポートしていきます。